『レーザービーム』

いろんな意味で衝撃的なPerfumeですが、このレーザービームの映像、やはり、衝撃的です。


イントロ部から彼女たちのやたらキレのある動きにビビるんですが、
歌が始まると同時に、このハンパない口パク感。
まず音声が機械処理されているので、三人の内誰が歌っているのかさっぱり分からないというか、この人たち流れている音楽と一体どういう関係あるの?という疑問。

『glitter』、あの曲はひたすら一本調子で起承転結的構成持っていないですから、歌詞にも起承転結的なものがない。それゆえ、何べん聞いても歌詞が覚えられない。そんな音楽に合わせてのダンスですから、どういう順序構成で成り立っているダンスなのか、部外者には覚えられる気がしない。
それどころか、ポリリズム的にダンスが表現しているものと音楽が表現しているものにはズレが存在し、しかしながら定期的に一致する箇所がある。


あれと比べると、こちら『Laser beam』のダンスはわかりやすいほうです。もっとも音楽に対してポリリズム的であるという特徴は変わりません。
指先から腕までピンと一直線に伸ばしてレーザー光線を表現している。そしてその光線が目から出ていることを示して、恋する視線がレーザービームだと表現している。そのレーザー光線が胸に刺さってシュワシュワという状態を胸に手をやることで表現している。

短い歌詞の歌ですから、あんまりダンスに対応させる箇所も少ないのですけれど、かなりの部分が誰にでも理解できるレベルでダンスで表現されています。


じゃあ、それ以外の、私が視覚に於けるポリリズム的と感じる、歌詞とズレるダンスというのは何なんでしょう?

どうみても、私には、これ、ピンクレディー風に感じられるんですね。

あんまり比べたくなかったんですが、やっぱ、同じですわな。

YMO好きだった人たちがPerfume好きやってる率が高いって話ですが、坂本龍一が言ってましたが、『テクノポリス』ってヒットさせるためにピンクレディーの楽曲を模倣したそうです。

そんなら最初から、ピンクレディーYMOが共演してレコード発表すりゃよかったんじゃないか。
なんなら小汚いおっさんをステージに上げる代わりに、女の子だけステージに上げて、おっさん達はコンピューターのプログラミングに専念していたらよかったんじゃないか。
女の子の方も、下手な歌うたうのやめにして電気処理された録音テープに合わせて口パクやってりゃよかったんじゃないか。そんでミニスカートと変な振り付けに専念していたらよかったんじゃないか。

今、Perfume見てしまうと、そういう風に思えるんですが、それが実現するまでに30年以上の時が必要だったというのは、異様なことに思われます。


アイドルに歌を歌わせる。アイドルは音楽の素養がない。それでも、彼なり彼女たちが音楽で自己表現しているようにファンに感じさせるために、優秀な作曲家にあえてレベルを落とした曲を作らせる。
30年間ずっとこんな才能の無駄使いやってたわけです。
アイドルが自己表現するためには、宇多田ヒカル位能力ないと無理でして、それだから宇多田ヒカルのCDって日本の売上記録更新したんですよね。
彼女と彼女の母親を例外とすると、アイドルが自己表現するために音楽やるのって本当に無駄なことだった。
で、それをやめにしてみたら、作曲する方は生き生きしてますし、不思議なことにアイドルの方もむちゃくちゃイキイキしているんですよね。
アイドルに無理に音楽表現者の立場を押し付けないから、彼女たちが今まで培ってきたアイドルの能力をいかんなく発揮できている。


オタク文化は日本の誇りだった、総理大臣までもそういうこという時代になってしまいましたが、
更に言うと、40年続いてきた日本のアイドル文化というのも、実は日本の宝だったのですね。
ずっと、モテない男向けの擬似恋愛の対象とかオナニーのネタみたいに後ろめたいもののように想いかんじつづけていたのですけれども、私自身、

でも、アイドルというあり方には、日本人のおもてなしの心というかサーヴィス精神が凝縮されていた、そういうことに今更ながらに気づかされます。

アイドルが恥ずかしいものだったのは、その音楽性に過ぎなかったのですね。




私たちは、神社に行ったとき、そこに神様がいるなんてなかなか思うことができませんが、神主とか巫女がなにやらごそごそやっているのを見るでしょ。そして、それだけで満足して、お賽銭上げることができるんです。

Perfumeのパフォーマンスというのは、歌詞とどこかずれている。本来Perfumeの歌って彼女たちの自己表現でも自己実現でもないですから、ズレているのが誠実なわけです。
でも、時々、ポリリズム的に一致する箇所がありまして、それが、巫女や神主の祈祷が神に届いた瞬間のようなハッとする瞬間に思えてしまうんですわね。