音楽と映像を組み合わせて新しい商品を作るにはどうしたらいいんだろう?

ビートルズの『ヘルプ』

を聞きながら車を転がすと、時速45km
ブルースプリングスティーンの『ボーントゥーラン』

、時速40Kmくらいに落ち着いてしまう。

相当激しい音楽だから、もっと速度出してもいいのにと思うのだけれど、あのテンポを私が「車の速度に翻訳」するとそれくらいの速度になってしまう。

変な話なんですが、いわゆる激しい音楽を聴いていると、それくらいのスピードになってしまい、後ろからビュンビュンと追い越しをかけられる羽目になりやすい。




人間の走る速度、
現在の世界記録で45キロ程度だそうだ。

つまり、どれだけ激しい音楽であろうと、その激しさはあくまで人間の身体能力の範囲で収まるものらしい。


ジェット機の窓の光景が、クラッシックの優雅なテンポにあってしまうのは、あれが、人間の身体と無縁な速度だからではないだろうか?
時速800Kmでは、心臓の鼓動では表すことができないのだろう。
2001年宇宙の旅』では、宇宙船はシュトラウスのワルツに乗ってゆったりと眠るように飛んでいった。


これに近い話が下條真輔氏の本に書かれていて、新しい音楽を求めて努力したところで、
人間の心臓の鼓動のことを考えると、限度があるから、グランジとかメタリカみたいなものって、これ以上先に進めないし、当然のごとく大多数の人の支持を得ることもない。

つまり、これ以上激しい音楽は、必要とされておらず、音楽はこの方向には進化しないということです。


エルヴィスからビートルズへ そしてレッドゼッペリンへという音楽の激しさの進化の流れは、そのあとパンクとヘビメタに引き継がれたあと、ものすごく先ぼそってしまう。

だから、ビートルズに挑戦しようと本気で考えるなら、もしくはベートーヴェンでもいいんですが、音楽の構造、あり方自体を相当いじることが必要になるわけです。

パフュームの場合は、かなりの部分それができているんですよ。

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谷村美月の走る速度とBGMの関係

富野由悠季氏の『映像の原則』についてですが、私があの本の内容を要約してしまうと、映画に於ける情感は視覚と聴覚で操作されているのだが、心臓の鼓動につながる速度感で一元化できるかもしれない。
ということです。


『檸檬のころ』谷村美月の演技を除くとあんまり優れた映画でもないんですが、音楽が映像にピッタリしているというのは、
走っている人の体の動きと音楽が同じリズムに収まっているというのではなく、
走り出した人の心の激しさと音楽の激しさの間に共通性があるということなんですね。

ここで、走るリズムと音楽のリズムを合わせてしまうと、見ている私たちは笑ってしまう。
人間の心とはあくまで目に映らないものである故に、人の心を表すためのBGMは、あくまでの目に見えてはいけない。
目に見えないから心だと私たちは感じやすい。

パフュームの芸ってのは、あの動きってのは歌詞とずれている.私はそのことをポリリズム的とか対位法的と書いているのですが、
この『檸檬のころ』で言うなら、
谷村美月が思い余って走り出すところがパフュームの芸であり、泣けるんですが、
リズムに合わせて速度を調節し始めると、安室奈美恵の芸に見えて、笑ってしまう。


だって、人間の心の激しさ、情感がクシャクシャになっている時って一定速度維持してる画面を比喩として用いること出来ないでしょ?
リズム無視してむちゃくちゃに走っている画面の方が、激しい音楽にはぴたっとハマるんですよ。



わたしが、これらの映像理論について考え、自分で一定の結論を出せたのは、谷村美月の『おにいちゃんのハナビ』繰り返しみて、繰り返し泣いていたからなんですね。

最近の映画って、画一的になって、富野由悠季氏が本に書かれているようなことが露骨に見えるようになってきているんです。

なんで私、こんな『おにいちゃんのハナビ』みたいなベタな映画で泣いているんだろう?とあまりの心地よい恥ずかしさから、画面全部チェックして理由研究してみたんですね。なんでこの女の子、こんなふうに目動かすんだろう、なんでこういうポジション取りするんだろう?片っ端からチェックです。
そうしたら、ある日、突然分かったんですよ。
ああ、映画ってこういうもんだったんだ。芸術ってこういう仕組みしているんだ、と。

そんで周囲の人に語ってみたら、話長いから誰も真面目に聞いてくれない。
前提が長いので、ここの作品の話になる前にみんな逃げる。
もしくは、モロ無意識の部分に重なることだから、ほとんど誰もなんでそうこころがゆうどうされるのか自覚していないし、
「今までお前ら人生で何見てきたの?ひょっとしてボンクラ?」みたいな調子を私が帯び始めると、怒り出す奴までいるんですわ。

今日の標語
パフュームもいいけど、谷村美月もね

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