break on through

パフュームの『スパイス』のせいで、the doors聴き直したりしてみたんですが、

勢い余って、自分で翻訳したりしてみる



嘘だってわかるよな
俺が嘘つきだってわかるよな
もし、おれが
お前をこれ以上幸せにできないと言ったとしたら

俺に火をつけてくれ
俺に火をつけてくれ
夜を火で焼いてしまえ

恥ずかしがっている時間は終わった
泥にまみれている時間も終わり
今はじめよう、そして後は死ぬだけ
愛は火葬の薪になる

俺に火をつけてくれ
俺に火をつけてくれ
夜を火で焼いてしまえ


簡単な詞に見えますけど、これ、実は、受験英語的にはレベル高いんですよ。
ネット上でこの詞の和訳を公開している人たちが大勢いるんですが、それらをチェックすると、そうとう多くの日本人が仮定法を理解できてないのがわかります。

これ、英文和訳的には、実は東大京大レベル。


そんで、これ訳せない人がおどろおどろしい単語使って誤訳したりするんですけど、

王様調に和訳すると、歌詞が本来持っていた素晴らしさがメラメラと伝わってくる。

誤訳すると、前向きな人生観に導かれがちなんですが、
これは、直訳してみると、死をどう捉えるかについての歌なんだなとすんなり了解できる。



ストーリーにはメロディーがある

わたくし、ここ数日間このことについて考えておりまして、


音 と ストーリー と 動作 には、

いままでの範囲を突き抜ける という観点からは、非常に強い一致が見られる。


たとえば、壁をぶち破るとか、突き抜けるとか、そういう詞に対応するように、それまで狭いレンジで動いていた旋律がピーンと高音域に突入したりします。
もしくは、そのブチ破る感を表現するために音量をmax化することもあります。
そして、それを振り付けで表現するには、狭い範囲での動作からぴーんと突き抜けたような動きを用いることがあります。


the doorsの『ハートに火をつけて♥』の場合は、

俺に火をつけてくれ
夜を火で焼いてしまえ

の二行の間に、断層があるんですよ。

この詞、1行で要約しろと言うんでしたら、「セックス(もしくはドラッグ)は生きがい」みたいな内容です。

そんなの、二人で勝手にやってっちょ。と第三者的には思うんですが、

そういう個人的な行為、ハートに火をつける行為から、夜というもっと範囲の広い社会亭なレンジのものを同様に燃やす という段階には、確実に断層があるわけでして、

個人レベルの体験を、社会レベルの現象に至らしめるには、相当の努力とエネルギーの追加供給が必要になるわけです。

それゆえに、この二行の断層をthe doorsはどのように表現してるかというと、

音を高音化したり、声量を大きくしたり、ジムモリソンのエグい動作を付加したりしているんです。

音、言葉、動き、それらは、別々のもののように私たちは思っていますけど、
ある種の論理によれば、一元化できるもののようです。



『ドリームファイター』『レーザービーム』のあーちゃんの空気感、ハンパねえ。


「このままでいれたら、て、思う瞬間まで」

テルテル坊主的な動き。



「もっと、もっと、もっと」
かしゆかの代名詞的な、巻き込むような螺旋状のゼスチャー


「はるか、先まで」  パフューム的にbreak on through を表現すると、こういう振り付け。


んで、なんで、この曲のあーちゃんが空気なのか、というと、
dream fighter』って、歌詞が実のところ、エロいんですよ。

「最高を求めて、終のない…をするのは、多分僕らが生きている証拠だから」

歌詞の「旅」って単語を、私やあなたが一番好きな行為と入れ替えても、この歌詞って成り立つでしょ。

つまり、かなり、the doors的な詞なんですよ、『dream fighter』は。


「だけど、普通じゃ、まだ物足りないの」
のっちさんのこの顔でこういう台詞言われたら、普通の男は何思うよ?

ドリームファイターで一番印象的な詞って、ここなんですよ。

そして、ここが一番印象に残るってことは、この歌詞、潜在的にエロいんですわね。


「歩く dream fighter」って、この箇所は音符と音節の数が合ってない。
「歩ぎわた」こんなふうに聞こえるでしょ。

つまり、歌詞カード上の歌詞は、歌詞カードの上にしか存在しなくて、そんな風にパフュームは歌っていないんですよ。

表向きの歌詞と、実はエヘヘみたいな歌詞の意味の乖離と相関関係がこの曲の魅力でして、

かしゆかは、そういうのわりきって乗っかれたんですよ。
でも、あーちゃんは、割り切れなかったんでしょう。

のっちさんは、多分、そういうのにむとんちゃく。自分をエロ眼鏡で見られることに対し無頓着。

あーちゃんは、
この方針の更に進んだ『レーザービーム』の場合は、完全に空気です。
dream fighter』では、この曲の建前の部分を健気に支えている感じ。
おそらく、あーちゃんって、禁欲的なんだろうな、と。

夢を追求するという額面上の意味の裏に、性的なエクスタシーに満ちたイメージがはめ込まれているのが『dream fighter』で、

そういう色眼鏡で見ると、かしゆか



一連の動作って、「エクスタシーってこんなもんよ」って表現に見えてしまいます。

なんで、ももクロは美しくなくて、パフュームは美しいのか、って、この辺の周囲の大人のスタッフのよこしまさかげんに由来するような気がします。