近未来三部作
リニアモーターガール コンピューターシティー エレクトロワールド と聞いてて面白いなと思うのは、
恐らく、作ってる人たち、何が売れるか分かってなくての試行錯誤、イメージチェンジだったんだな、と、
近未来とかでひとくくりにするのは、よろしいんでしょうけれども、別に作ってる側は、三部作にしたかったわけでもなくて、どこかで当たればいいな、と思いながらこんなノリでやっちゃったんでしょう。
三作とも、似たようなもんちゅやあにてますけど、
売れて以降の
ナチュラルに恋して と 微かなカオリ と スパイス が 似た感じがするってのとは、全然別の、
切羽詰った、裏事情を感じてしまいます。
正直、わたしには、よう分からん。
この当時、すでに上海にはリニアモーターカーが走っていて、
「リニアモーターガール」といわれましても、うーむ??という感じだったでしょう、当時パフュームを知っていたとしたら。
SFって、本来、科学的知見を元に未来について描く小説スタイルだったのですが、
そんなSFの歴史も100年を超えるようになりますと、
かつて夢見られた未来についての考古学、みたいなものがSFの一分野として派生してきまして、
「リニアモーターガール」ってそういう世界観だと思うのですが、
いまだに日本にもドイツにもリニアモーターカーが走っていないのに、
なんでだか、独自開発したわけでもない中国が、ドイツ本国では走らせることの出来ない怪しげなものを、世界初として、実用化したというわけの分かりにくい現実。
このあたりのセンスに、振り付けで歌詞の意味をゆがめちゃお的なperfumeの芸のあり方を感じる次第。
いまだ上海には、こういう通勤客はリニアモーターカーにはいない。
この曲は変だ、この歌詞は変だ、このPVは変だ、というのはみてるとすぐに勘付くのですが、
でも、現実のほうが変でしょ?
技術もへったくれもない発展途上国にまずリニアモーターカーが出来た、
それに比べりゃ、この曲って、インパクト弱いですよ。
中国のレストランに行くと、たいていウエイトレスは切込みの深いチャイナドレス。
こんな感じ。
『ブレードランナー』もそうなんですが、近未来は、中国がのさばるって了解でOKです?
でも、それって、新味あんまりないんすよね。
わたしは、これ、うれんだろ、と思うんですが、
この近未来三部作ってのは、この売れなさの理由というのを一つ一つチェックしていく過程だったんではないだろうか、
三部作って後に行くにしたがって、成功に近づいているのがびしびしと感じられるんですわね。
よくよく聞いてみると、リズムのどんちょうな感じが、共産主義軍隊の行進のようでもあり、
この、
と似てる。
このPVつまんないんですよね。衣装、メイクも、わたしゃ好きじゃない。
そんでも、つまらん演出すっ飛ばして、ステージで女の子たちの体の動きだけで表現されると、
ライブ動画、けっこう泣ける出来です。
今になってしみじみ思うのですが、
そりゃ、おっさんの立場から言えば、二十歳過ぎたばかりの女の子たちより、知識はあるわさ。映像の作り方についてもわかっとるかもしれん。もしかすると音楽の知識も多いかも知れん。
んでも、
このライブ動画みると分かるんですが、この当時で、既に女の子三人は、体を動かすことで何かの意味を伝えようとすることのエキスパートですわ。
これに関しては、かなう日本人は、ほとんどおらんですよ。
交通標識の数が70とか80とかいわれてますけど、
霊長類が覚えられる図形の形の数も最大でこんなもんらしくて、
ことば っていう、微々たる音声の違いを、音節区切ることで区別つけていくというやり方を使わなかったら、
人間でも、やり取りできるサインの上限って、交通標識の70とか80くらいらしい。
そんで、パフュームのゼスチャーってのも、おそらく70とか80くらいの数しかないんですよ。
皆さんもみてて分かるでしょ。あの歌とこの歌で同じ振り付けの箇所があるってのは。
それってパフュームの限界というか、振付師の限界というよりかは、
人間の視覚に対する弁別能力の限界らしいです。
そして、そういう点からパフュームの振り付けをみていくと、
70から80のヴァリエーションしかない振り付け言語のそれぞれの単語に、
その場その場で、最も正しいだろう心をこめるべく努力されているのが、みてて分かるわけです。
その地道な努力と、この歌の歌詞のつらさが重なって、
いい出来になってるんですね、ライブの動画のほうは。