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紅白の話  『愛の賛歌』

おそらく、わたしがパフュームを最初に見たのは、スーザンボイルが出た2009年の紅白歌合戦だと思います。

だと思います、というようなあいまいな言い方になるのは、
記憶がほとんどないからです。

2009年の紅白を見終わった後、
「スーザンボイル一人に、全員束になってもかなわんかったぞ、何だこりゃ、日本の音楽界は!」と非常に怒りを感じていたのですが、

パフュームに関しては、なんかうっすらと、
「奇をてらったアイドルがしょーもない歌うたいおって」みたいな記憶があるようなないような。

まあ、紅白歌合戦見てるときって、酒飲んで隣の人とべちゃべちゃ話してますから、そんな真剣に聞いてるわけでも見てるわけでもないんで、
パフュームの芸が全く通じないってのはあるんですが、

それ以外にも、他の歌手と横並びの音量にされる、セットも限定される、曲も短縮される、観客との一体感も期待できない、など、難しい条件が重なります。

結局、歌の上手い人がすべてかっさらっていくのが、紅白歌合戦であり、
歌合戦っていうくらいだから、踊るだけで口パクるパフュームに不利なのは当たり前ちゅやぁ、当たり前なんですが。


今年、パフュームはくりんくりんです。
なんか見なくていいや的な気持ちに既になっています。

そして、出場者リストを見ますと、
もう既に、残り全員が束になってかかっても美輪明宏一人に負けるだろう予感がプンプンします。

去年は、ふるさとの歌を歌うという縛りから、地味な曲を演じ、印象が少々弱かったのですが、

今年歌うのは、おそらく、『愛の賛歌』
エディット・ピアフの代表曲であり、フレンチ・シャンソンの代名詞とでもいう曲です。



でも、日本では一般的には『愛の賛歌』というと、越路吹雪

宝塚の象徴のようなスターの代表的持ち歌ですが、
こうやって聞いてみますと、そんなによくありません。美輪明宏と比べると、かなり見劣り聴き劣りします。

詞なんですけど、
『愛の賛歌』って、結婚式で歌われる歌と思っている人も大勢いると思います。
でも、元々そう言う詞ではなくて、
エディット・ピアフが不倫相手との愛の終わりについてうたった詞であり、死んでから結ばれましょうという内容だったりします。
奇遇なことに、この曲をリリースする前に、本当にその不倫の相手が死んでしまいます。

本来の詞を、甘い言葉だけで編集しなおしたという弱点以外にも、
歌う時の演技が、いかにも宝塚で、やたらと振れ幅の大きい人生を送った美輪明宏の演技と比べると、
温室育ちの芸みたいなひ弱さを感じてしまいます。

まあ、三輪明宏と比べる方が悪いんだとは思いますが。


超絶に有名な曲ですから、いろいろ有名な人がこの曲を歌っています。


由紀さおりの歌を聴いて、
「うわっ、ショボ〜」とか思ってしまう。
いかに、のど自慢がこの歌を歌い継いできたかという歴史の怖さですね。
この歌を歌ってyoutubeで公開されると、必ず、そのほかの大物歌手と比較され、勝ち目はほとんどありません。



加藤登紀子も、公開処刑状態。


こんな羽目に陥るにもかかわらず、多くの人が『愛の賛歌』を歌っており、『愛の賛歌』歌った歌手だけ集めて紅白歌合戦できるんじゃないか?というくらいです。


ウィキペディアより)
『愛の賛歌』の日本のカバー※50音順(未CD化含む)
淡谷のり子
一条和矢 - 『Tightrope』収録
岩崎宏美 - 『Dear Friends III』収録
宇多田ヒカル - 『Utada Hikaru SINGLE COLLECTION VOL.2』収録
及川リン - 『Happy Celebration』収録(編曲:田中ユウスケ)
オナニーマシーン『女のコ』収録
cargo×seira - 『FLOWER SHOWER』収録
加藤登紀子 - アルバム『TOKIKO L'amour 1 〜愛の讃歌〜 さよなら私の愛した20世紀たち Vol.6』収録
岸洋子
筋肉少女帯 - 『THE SHOW MUST GO ON』収録
桑田佳祐 - LIVE AAA 1998「桑田佳祐が唄う20世紀ベストソング」
越路吹雪 - 詳細は上述の通り。モノラル録音版とステレオ録音版が存在し、歌詞は同じだが伴奏はかなり違っている。
斉藤和義 - シングル「虹」収録(LIVE at ZEPP OSAKA 2007.6.20 アルバム『Collection "B" 1993〜2007』収録)
佐良直美
櫻井敦司 - シングル「惑星 -Rebirth-」カップリング
沢田研二 - act CD 大全集(disk6:愛の賛歌(HYMNE A L'AMOR))
菅原洋一
SOPHIA
チャラン・ポ・ランタン
東京スカパラダイスオーケストラ - 『KinouKyouAshita』『WORLD SKA SYMPHONY』収録
徳永英明
中村あゆみ - 『rocks』収録
谷川きよし
本田美奈子. - 『JUNCTION』収録
美川憲一
美空ひばり - 『カバーソング コレクション』収録
美輪明宏
森次晃嗣 - 『ジョリーシャポー 〜悠久(とき)〜』収録
森山良子
山口百恵
吉永小百合 - 『吉永小百合 愛を歌う』収録
Les MAUVAIS GARÇONNES
和田アキ子 - 『AKIKO WADA 45th ANNIVERSARY ESSENTIAL COLLECTION』収録


ネットを漁ると、いろいろ出てきます。

勝負曲としてうたっているのか、それともファンサービスとして軽くうたっているのか の違いもありますので、誰がどうのこうのというのは、あまり正しいことではないのでしょうけれども、

美空ひばりヴァージョン、中国の動画サイト優酷で見ましたが、
ひどいもんでした。

本田美奈子ヴァージョンは、デイリーモーションで見ましたが、
これもダメ。

宇多田ヒカルヴァージョン、
やめときゃぁよかったのに。

そういえば、先週テレビで和田アキ子が歌っていました。
ゴミですな。

吉永小百合…、探してないですけど、
そっとしておく方がいいでしょう。

びっくりするのは、森次晃嗣
この人、ウルトラセブンのモロボシダンですよ。


日本人アーチストの海外進出と言いますと、
沢田研二、フランスでの成功は、ガチです。
そんなジュリーだけに、変化球ぎみの『愛の賛歌』。公開処刑は免れました。


んで、意外なことに、いいのが、
山口百恵ヴァージョン。

山口百恵って歌上手くない、それ分かったうえの『愛の賛歌』のステージなのですが、
この詞、腰地吹雪ヴァージョンだと、結婚式の歌なんですが、
原詞に忠実に訳すと、破局の歌であり、弔いの歌であり、それでもなおかつ愛の歌であるのですが、
この曲の持つ暗い側面を演出で表現する、ついでに山口百恵も割と暗いイメージの人ですから、
そういう部分で、成功しています。



『愛の賛歌』の凄いところは、横並びの条件で歌手に競わせたら、明確に優劣がついてしまうという怖い曲でありながらも、
普通の人が普通に歌っても、ちゃんといい歌になるところです。

ご飯に味噌汁、干ざかな、海苔の朝ごはんは、家庭で普通に食べてもおいしいけど、
本気で高級料亭に競わせたら、限度がなくなるというのと似ています。



紅白では、おそらくこの調子で7分以上の舞台になるはずです。

今まで、何人もが『愛の賛歌』の詞を訳してきたのですが、
美輪明宏のが、一番原曲に近いような気がします。


高く青い空が頭の上に落ちてきたって
この台地が割れてひっくり返ったって
世界中のどんな重要な出来事だって
どうってこたぁありゃしない
あなたのこの愛の前には
朝目が覚めたときあなたの温かい掌の下で
あたしの体が愛にふるえている
毎朝が愛に満たされている
あたしにはそれだけで充分


もともと、不倫の愛の終わりについての詞であり、これを歌うピアフは、その相手が飛行機事故で死んだ事実にこの曲を歌う度に対決させられたのですが、

美輪明宏に関していうなら、
彼は長崎の出身であり、
最初の二行に表わされた、世界の破滅の光景は、おそらく原爆のことなのでしょう。

念頭に置かれている悲劇の凄惨さに関しては、美輪明宏の方がピアフよりもすごみがあります。

また、興味深いことですが、神戸ヴィッセルの応援歌はこの曲の替え歌だそうです。

むろん、詞の冒頭の部分にある破局を神戸大地震に重ね合わせているわけです。


「高く青い空が頭の上に落ちてきたって この台地が割れてひっくり返ったって」
この詞をみると、いやがおうにも『エレクトロワールド』を思い浮かべてしまうのですが、

わたくし、演劇的なステージを行う歌手の代表格として、何度か美輪明宏をこのブログの中で取り上げたことがあります。

Perfumeって芸の部分で精進していったら、いつか美輪明宏超えるリジェンドになれるのか?というと、
可能性ゼロってわけではないんですが、
『エレクトロワールド』をライブでやるとき、懐メロ大会にしてしまうようですと、先行きは険しいようです。




ついでにもう一曲。
ちりとてちん』『カーネーション』と朝の連ドラに使われていた『話してよ、愛の言葉』の美輪明宏ヴァージョン。

日頃忘れがちなんですけど、美輪明宏って男ですから、
女の人が歌うよりも、力強くうたえるのは当たり前というか、

よく考えると、反則技のような気がしないでもありません。