勝負曲 『微かなカオリ』
正直、私にとって、どうでもいい曲だったんです、『微かなカオリ』
だって、PV、これですよ。
単なるアイドルPVじゃないですか。
いわゆるパフュームの振り付けがない。テレビ用の振り付けでも、キャンディーズか?というくらいおとなしい。
『微かなカオリ』って、チューハイのCMソングなんですが、
どうせ、また、チューハイに微かにつけられた果実性の甘い匂いのことだとばかり思っていました。
もしくは、オナラか何かについての歌だと。
しかし、よくよく考えてみると、パフュームって、香水の意味で、嗅覚に関わるグループ名をつけていながら、嗅覚に関する歌ってこの歌以外にないんですよ。
食い物、味覚に関する歌なら大量にあるのに、香水についての歌がない。
非常に地味な印象の曲ですが、パフュームの主題曲といってもいいのかもしれません。
「香水って意味のグループなのに、今まで一曲も匂いについての歌書いてあげてないのはまずいんじゃないか」そんな風に中田さん考えたのかもしれません。
「そんでも、香と漢字を使うと、あまりにもバレバレだし、のっちだけ名前に香が入ってなくて仲間外れになっちゃうから、カタカナでカオリと書いてカモフラージュしてみました」
わたしは、そのように推測します。
地味で、振り付けもほとんどなくて、単にライブやテレビで生歌聴かせるための曲のように思えてしまいますけど、
JPNツアーでは、見事にライブ前半の勝負曲になっています。
小学校の音楽の教科書にでも似合いそうな曲。
CDで聞いた印象では、この曲、ライブで生歌するために作られたんかな?と思っていたんですが、
オルゴールみたいな曲に合わせて、からくり人形のように三人が動く振り付け。
完全な視覚パフォーマンス優先の曲になっていた。
振り付けは『時の針』のからくり人形を踏襲しているものの、その機械的な動きが徐々に解体されて人間のものになってく。
『時の針』と『微かなカオリ』の二曲で、『spring of life』のPVと同じコンセプトを表現しているものと思われた。
かすかな恋心が芽生えることで、機械が人間に生まれ変わるコンセプト。
パフュームのことを、古代から脈々と続く芸能の伝統を考えるとむしろ本流。
そんな風に言うこともできますけれど、
でも、ここ半世紀以上のエンタメの歴史を考えると、どうしてもキワモノ的なイメージは払拭できません。
海外進出に際しては、なるたけそういうキワモノ臭を軽くして、出来るだけ直球勝負を挑もうとしているのでしょう。
体を鍛えて、ダンスのレベルを上げて、生歌の比率げていくという、世間で言うところのまっとうなプロの道を選択したようですけれど、
パフュームの無茶な芸風、70年代のパンクロックの如く既存の音楽とエンタメに真っ向から衝突するようなところが好きな私みたいなファンには、少々、寂しいなと思わないでもないんですね。
そんでも、
パフュームファンは根が素直な人が多いので、みんな、基本的に、こういう場面好き。
客席に投げキッスして、それから三人で至近距離で投げキッスし合う。
いろんな人のブログを読んでいると、やはり、この曲のこのシーンがこのライブの山場、少なくとも前半の山場らしい。
テレビで見ていると、表情の細かいところがよくわかるので、とにかく印象的なシーンになっている。
東京ドームの映像と比べると、ワイヤーで空中移動するカメラもないし、レーザー光線主体にセットが品良く地味にまとまっていたりで、
さらにその上、テレビで見る分には、臨場感もないですから、
なんかイマイチだと思ってみていたんですが、
『微かなカオリ』からは、やっぱパフュームってええなぁ、と、いつものノリで見てしまいました。
この次は曲調の似た『スパイス』につなげられ、ほんわかと盛り上がったいい感じが以後持続していきます。