近未来三部作について
『リニアモーターガール』なんですけど、今になって思えば、いつ事務所解雇されるかわからん時に、
えらい悠長な曲つくっとったんやなぁ、という感じです。
楽曲だけでなく、振付にしても悠長なもんです。
この後の二曲の切羽詰まった感じと比べると、これはないだろう?という感じがするのですが、
ただしかし、
詞に着目してみると、
ハイスピード レスキュー Fall in Love と単語を拾っていくと、
『コンピューター・シティ』の詞のキーワードがほぼ出ています。
というか
ハイスピード(=尋常でない努力) レスキュー Fall in Love って、Perfumeのバキバキな曲のほとんどのテーマになっていないでしょうか?
作詞家キノ子さんは、この詞を最後に解雇されるのですが、
面白い置き土産を遺してったなと思う次第。
『コンピューターシティ』では、前作のキーワードをもとに、分かりやすい詞が書かれていますし、それを説明するための分かりやすい振付が充てられています。
切実なコミュニケーション願望というか、切実な成功願望に満ち満ちているような気がするのですが、
この曲もうちょっと売れてたら、三曲目はもっと明るい曲になってたんでしょうね、きっと。
PVではリニアモーターガールは、上海のレストランの服務員みたいな恰好をしていますけれども、
『コンピューター・シティ』に雲と雲の間を突き抜けてとんでくる女の子って、リニアモーターガールのことなんだろうか?こんな中国人みたいななりしてんのか?と思うと、なんかちょっと、いやっすね。
http://ameblo.jp/muraki-handsome/entry-10105255021.htmlの話が面白くて、ついでにコメント欄まで面白いのですが、
『エレクトロ・ワールド』に於いてPerfumeの三人は、破壊をつかさどる存在ということを書かれているんですが、
わたしも、そう思うんですよ。
ちょっと話は、『コンピューター・シティ』に戻りますが、
ざっくり言って、男の子と女の子のかみ合わない会話にデストピアSFの衣をまぶした詞といっていいかと思いますが、
「絶対故障だ〜…」の箇所は男の子のセリフとしてまず問題ないと思うんですが、
「逃げ出したい、壊したい、真実はあるのかな?」ってどっちのセリフなんでしょう?
詞的にも振付的にも決めつけがたいところです。
「一つだけウソじゃない…」は女の子のセリフ の様に詞的には思えるのですが、
振り付け的にみると、コンピューターのポーズから、指一本突き出すのですから、男の子セリフのように見えなくもありません。
あえて意図的に、この台詞は誰が言ったのかわからないようにすることで解釈の幅を広げ、共感できる人の数を増やしているのでしょうが、
「逃げ出したい」にはドアを開ける仕草
「壊したい」には、そんなにはっきりとした振付は充てられていませんが、
あえて推測するなら,開いた脱出口が閉じてしまわないように角材で補強するようなイメージ。
もしくは、行き場のない力のこもっていないパンチ というとこでしょうか?
「真実はあるのかな?」は、真実を見つけようとした指が歯車に巻き込まれてしまうイメージです。
『コンピューターシティ』で壊したいって言ってるんですから、近未来三部作の問題の解決法というのは、
壊すことによってもたらされるわけでして、
実際、女の子に好きだって言われると、コンピューター故障しちゃいますけど、
本当は、世界を壊すことを望んでいたはずでして、
『エレクトロ・ワールド』は世界を壊すことが目的の曲で、壊すことに対して肯定的な思いが詞的にも振付的にもあるように見えます。
この曲のギター、ものすごくThe WHOっぽいんですが、
The WHOっていうとステージでギターとかドラム壊しだすことで有名なバンドだったんですが、
この手のギターには、たまりにたまった破壊衝動みたいなもんが感じられて仕方ないとこです。
そして、Perfumeの曲を解釈することは、中田ヤスタカの創作意図をさぐることではなく、
結局のところ観客&視聴者が何を感じてしまったかの方が重要であり、
それを延々とやっていると、自己精神分析みたいなものになってしまいがちなんですが、
その自己精神分析に一定の客観性を確保するには
観客&視聴者が目にし耳にする最終形態のyoutubeとかライブとかDVDをちゃんと重視しませうというのが、このブログの趣旨といってもいいんですが、
Perfumeで、パンチの振り付けのある曲って、どれとどれでしょう。
えーっと、
『コンピューター・シティ』の猫パンチあります。
『グリッタ―』でもパンチしてます。
『ドリームファイター』にも、自分で自分を殴るパンチがあります。
そんで、『エレクトロ・ワールド』にもパンチがあります。
この曲のパンチって、詞のない箇所での振り付けで、
The WHO調のギターにあわせて破壊衝動みなぎる振付が充てられているんですが、
相当苛立ちが感じられる曲ではあります。
『コンピューターシティ』の猫パンチと比べて、かなり本気度が高くてしかも執拗にパンチ続けるんですが、
詞と無関係のところでのパンチで、一体誰と戦っているのか?がちゃんと提示されることはありません。
まあ、しかし、『リニアモーターガール』と『コンピューターシティ』の詞と繋がっているとするなら、
女の子に「好き」といわれたくらいで崩れるような厭世的な世界観とか孤独感、おそらくそれは自信ないくせに自尊心ばかり高い、みたいな矛盾した心の有りようが原因なのかもしれませんが、
「好き」とか言われたくらいでひびが入るような世界なら、とっととこわれてしまやぁいいんでないかい?
という苛立ちのように解釈できなくもないのですね。
ガンオタみたいに、SF的世界観のなかで空想楽しみたい人もいらっしゃるとは思いますが、
中田ヤスタカって、本職SF作家じゃないですし、
それに、Perfumeの振り付けって、観念性の高いこと表現するの苦手で、
心の機微みたいなものを表現することにこそ高い性能を発揮するもののようでして、
SF的世界観なんか、表面上の飾りつけとして取っ払ってしまい、男の子と女の子の物語として解釈した方がすっきりするのではなかろうふか、と思っております。
おそらく近未来三部作の番外編が『セラミックガール』だと思われるんですが、
「女の子が僕を愛してくれたら、僕の世界は変わるのに…」的な他力本願な夢って、古典的少女漫画パターンの男と女の入れ替えですわね。
夢見ているだけで、いつか白馬の王子がやってきて云々というパターンですけど、
そういう棚ボタ式の幸福にPerfumeの女の子たちって一番遠い自力本願な方々の様に見えるのですが、いかがなもんでしょう?